- 広島県府中市の情報
- 人口:39,687人(2018年10月1日現在)
- 面積:195.75 平方km
私たちシダックスグループは、「SDGs」の取り組みに力を入れています。
公共施設をいろんな役割を併せ持った複合的な施設にしていくことは、施設管理やまちの活性化に知恵を絞る自治体で様々に試みられています。広島県府中市では、「児童館」がその役割を果たしています。子どもたちが遊べる場所というだけではない、まちの期待や未来への希望が詰め込まれているのが、「府中市こどもの国ポムポム」です。2018年4月のリニューアルオープンから、シダックスが施設の指定管理者となり、12人のスタッフで受託管理運営を担っています。府中市の伝統の地場産業は、家具づくり。江戸時代から始まって発展し、昭和の高度成長期には高級婚礼家具の生産地となり、「府中家具」は全国に知られるようになりました。現在もその技術を守る多くの木工企業が、リビングやダイニング、キッチンの家具や木製小物をつくっています。この木工のまちを次世代に残していこうと、府中市では2013年から子どもたちへの木育(もくいく)をスタート。木に触れながら成長し、感性豊かな心を育み、郷土への愛着心を深めてもらいたい。そしていつか地場産業の担い手として活躍する人も出てきてほしい。そんな産業振興の想いもある「木育」は、ちょうど建て替えの時期を迎えていた児童館にも大事なテーマとなり、「木育の推進拠点」というコンセプトが生まれます。廊下や階段、遊具にも木をふんだんに使った、温かみのある児童館「ポムポム」は、こうして誕生したのです。
1階には、床や遊具に主に杉の木材を使った「あかちゃん すぎひろば」、主にひのきの木材を使った「ちびっこ ひのきひろば」があり、積み木やおもちゃはもちろん、大きなすべり台やボールプールも木製です。2階には「クラフトファクトリー」という大きな工作室があり、様々な工作体験に幼稚園児から参加でき、ウッドボックス、ぶんぶんゴマ、鉛筆たてなどから好きな制作物を選んで作ることができます。「ここをしっかり押さえていてね。穴をあけるよー」。スタッフの指導のもと、木工の機械も使いながら、可愛い作品が生まれています。夏休みの宿題の工作をここでつくる小学生も多くいます。「木育を推進する施設として、私たちも木のことを勉強して、子どもたちに伝えるようにしています。木も生きていること、どのくらい強くて、どのくらいの力をかければ傷がつくといった感覚も身につけてほしい」(館長 住川翔一)。工作に夢中になっている子どもたちの様子を嬉しそうに見つめていたのが木工職人の豊田裕子さんです。メイド・イン府中の木のおもちゃブランド「KiTAS(キタス)」の製品づくりにも参加している女性の職人さんです。「木にはそれ自体に命の息吹があります。思い通りに加工できないこともあるけれど、考えて、工夫して、申し分ない出来栄えに仕上がったときは、本当に幸せな気持ちになります」(豊田さん)。ゆくゆくは「ポムポム」でワークショップもやって見たいと話してくださいました。
「はじまるよったらはじまるよ♪」。体育館フロアから聞こえてきた賑やかな声は、「ポムポム」の保育士、森原竜希(りゅうき)の声。0歳の赤ちゃんと保護者の方を対象にした「ポムっ子くらぶ」の時間です。森原が週1回開催している、保護者と赤ちゃんがスキンシップのあるリズム遊びを楽しむ人気のプログラム。最初はキョトンとしていた赤ちゃんたちが、森原たちスタッフの歌と伴奏、ママからのスキンシップで、どんどん笑顔になって、可愛い笑い声も聞こえ出します。「ずっと赤ちゃんと家で向き合っているだけでは保護者の方も疲れてきますから、ここで体を動かして、お友だちもつくって、また笑顔になってほしいです」(森原)。土・日・月曜日と祝日は、「ポムポム」の中に、就学前のお子さんの一時預かりを行う「さくらほいくえん」も開かれます。これも子育てで忙しい日々を送る保護者の方にリフレッシュしてもらおうというサービス。子どもたちに人気の森原お兄さんにお子さんを預けて、お買い物や食事、美容院などに行くことができます。子ども向けの料理教室を行う調理室「ポムズキッチン」でも、栄養士の神谷京子が月1回は大人向けの料理教室を開催。「普段の家ではなかなかできないお料理で、楽しんでいただいています。メニューはリクエストにお応えして決めていて、次回は黒麻婆です。」(神谷)。子どもだけでなく、ママやパパも元気にするのが「ポムポム」の目標です。
リニューアルオープン以降、「ポムポム」の運営を担い始めた当初のシダックスメンバーにとって、不足していたのが地域の方たちとのネットワーク。それを補ってくれたのが、NPO法人「府中ノアンテナ」さん。府中のファンや暮らす人を増やし、明るく楽しい地域社会をつくろうと、木育の推進活動や、空き家・空き店舗の改修・再生といった活動を続けているNPO法人です。代表理事の水主川(かこがわ)緑さんが、おじいさんの経営していた呉服店が府中市の商店街にあった縁で、町並みを保存しながら何か地域社会を元気にできないかと、2011年に活動をスタート。「私自身、若い頃に大きな都市に出てから戻って来たUターン組なんです。結婚して子どももできて、あらためて気づいた府中の良さを子どもたちの世代に繋ぎたい、私はデザイナーなので、そのスキルを活かせないかなと考えて活動を始めました。他にもいろんなスキルを持ったメンバーが得意分野を活かして活動しています。商店街でカフェを開いた仲間もいます」(水主川さん)。市の職員の方、商工会議所の方々とも関わりの多かった「府中ノアンテナ」さんが、シダックスメンバーにもまちの方々を紹介してくださって、初年度の活動も軌道に乗せることができました。「ここから商店街への人の流れも生み出していきたい。「ポムポム」のスタッフの方も、まちのお祭りでワークショップをしてくださったりと積極的なのが嬉しい」(府中ノアンテナ 副理事 宗藤正典さん)。まちとの関わりを深めながら、まちの活性化拠点という役割も「ポムポム」が果たし始めています。
お好み焼きが有名な広島の中でも、府中市のお好み焼きは、ミンチ肉を使って表面をパリッと焼き上げる独自の「府中焼き」。ものづくりが盛んで働くお母さんも多かったこの地域で、手軽な子どもたちのおやつとしても浸透しました。そんな府中ならではの食文化も大事に伝えていこうと、「ポムズキッチン」では「府中焼き体験教室」も定期的に開催。地元の講師と栄養士の神谷で、おいしい府中焼きを子どもたちに伝授しています。「たくさんの府中らしさに、私たちシダックスのアイデアやノウハウをかけ算して、もっと盛り上げていきたい」(シダックス 中四国支店 副支店長 平山明美)。「最初は手探りでしたが、若い館長のもと、スタッフがチームワークよく運営していくことができてきました。やってみたいことはまだまだあるので、一つひとつ実現していきたい」(シダックス 中四国営業推進部 田口雄基)。「府中市の人や企業にも運営に参画していただこうとサポーター制度も始めました。積極的に外部と連携して、力を集めていくのもシダックスらしさだと思います」(シダックス 西日本営業推進統括部 園田厚仁)。もう児童館という枠にはおさまらないとはいえ、全ての軸にあるのは、未来を担う子どもたちをみんなで健やかに育もうという想い、それが持続可能なまちづくりにつながるという信念です。「子どもたちが大人になって市外へ出ていく時期があったとしても、また戻ってきたくなる原点の場所にしていきたいんです」(府中市 健康福祉部 女性子ども課 山田資子課長)。今日も遊具やおもちゃの安全を点検して、スタッフたちが「ポムポム」の扉を開けます。何十年後のまちの未来を想いつつ、今日も、一度しかないこの今を、きみと楽しく過ごそうと待っています。さあ、遊ぼう!